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オステオアゴラ九州沖縄エリア 2002年秋季 座談会
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テーマ : 症例から考える骨粗鬆症の診療

 「 薬物療法の効果判定 」

桐山
 次に、治療のモニタリングにおいて、骨代謝マーカーはいかがですか?

藤山先生
 エチドロネートを使っていると、投与後に骨吸収マーカーが上がってしまう方がリウマチの患者さんの中にかなりいます。そういう方たちの骨量を測定した時に、無効群になれば話は早いのですが、結構効いている方がいます。リウマチは慢性炎症性疾患ですから、骨代謝マーカーの評価は、疾患活動性を十分に考慮した上で行うべきです。


桐山
 ノンレスポンダーかというと、そうでもないということですね。


藤山先生
 アレンドロネートでいうと、それだけ有効率が高いところが一番の長所だと思います。


桐山
 8割、9割レスポンスするということがわかっています。

藤山先生
 そうなると、やはり骨量測定で判定するのが現状では一番かと思います。リウマチのような疾患の場合は、骨代謝マーカーで薬剤の有効性を判定するのは無理ではないかと思います。

桐山
 骨量測定については、村上先生はHRTをして前腕で骨量が増えたとおっしゃっていましたが、一般的には大きなstudyでは、腰椎と大腿骨頸部と全身骨のみで薬物の効果が見られるといわれています。そのことに関しては超音波、DIP法などで見られている先生方も多いと思いますが、薬物の治療効果に関してはどうでしょう?


村上先生
 薬物との関係で明らかに増えた例もありますけれども、確実に増えたといえるほどのデータはまだ持っていません。

前田先生
 骨折の予防効果と骨量が増加するのとは相関しないわけですか?


桐山
 骨量がさほど増加しないのに骨折が半分になるのはなぜかというのは、おそらくビスフォスフォネートに関しては、骨吸収の抑制によって骨量に規定されない骨強度を変えているといわれています。また骨量が増えた方では骨折を抑制できるといえる方向になってきてはいます。

前田先生
 骨量で薬物の効果を見るのは非常に微妙なことですね。


桐山
 骨折を起こしたか、起こさないかで治療効果を見るのは臨床試験の時だけで、実際の臨床では何かモニタリングをするものがあるわけです。それで今一番確実なのは骨量だろうといわれています。骨代謝マーカーはよく反応するけれども注意すべき点もあります。


前田先生
 目に見えたデータとしてかなり下がるわけだから、結構患者さんには説得力があるのではないでしょうか。コンプライアンスを良くするための材料としては非常に良い。将来の骨量の増加や骨折の危険度もある程度予測できる。そういう点で、骨代謝マーカーは非常に有用ですね。

村上先生
 骨代謝マーカーはNTXとDPDで測っているのですけれども、骨量は最初に測定し、その後も測定している症例はそう多くはありません。NTXやDPDの値が高値の場合、疾患としては副甲状腺機能亢進症などがあると思いますが、どのくらいの値を目安にしたら良いのでしょうか?

桐山
 基本的には骨量が減少していて、マーカーでは例えばNTXだと100nmolBCE/mmol Crを超える方はCaとリンは絶対測ります。Caが少しでも高い、リンが低い場合は、PTHを測ります。骨粗鬆症の鑑別ではCa、リンは必ず測ることになっていますので、そこから鑑別できると思います。
 癌の骨転移に関しても、100、200のレベルです。DPDだと10、20nmol/mmol Crというレベルまで上がります。開業の先生で治療効果をモニターするのには、骨量ではなかなか難しく、骨代謝マーカーが簡便で良いということにもなりますね。しかし、今までは骨量が明らかに増加する薬剤がありませんでしたが、当院のアレンドロネート投与例の骨量を測ると、大体4ヶ月〜半年くらいで骨量が2〜5%程度上がる患者さんがほとんどですので、今までの薬剤に比べたら明らかに上がったと思える方が多いです。私の場合は基本的には腰椎で、腰椎が使えない方は大腿骨頸部で測っています。腰椎を測ればある程度治療効果は見られますので、腰椎を測ってモニターすると、より確実になると思います。中には骨代謝マーカーが全然代わらなくても確かに骨量は上がっている方もいます。
 それから、骨折を起こすと骨吸収マーカーは必ず上がりますので、意外と圧迫骨折を起こしていて、急に腰が痛くなった場合でなくても上がりっぱなしになる場合は要注意ということです。


村上先生
 保険ではNTXは6ヶ月ですか。


桐山
 そうですね。治療前に1回測って、あとは6ヶ月前までに1回測れます。


村上先生
 6ヶ月後でも、大体30〜40%は骨代謝マーカーの変化があるのですか?


桐山

 アレンドロネートだと、3ヶ月では明らかに抑制があって、半年後でもずっと抑制しています。他の薬剤を使った時に、HRTだと3ヶ月では抑制できていないかもしれないので、6ヶ月くらいで見てもよいということです。アレンドロネートだと、3ヶ月で見ても大体抑制されているということです。


藤山先生
 現状では、やはりDXA法による骨量測定、それも末梢骨ではなく腰椎や大腿骨の測定が最も重要だと思います。このようなDXA装置を保有する病院を核としたネットワーク構築も大切ではないでしょうか?


桐山
 CTやMRIのような感覚で、測定だけの依頼をしてもよいかもしれません。私は結構DXAを使っていますが、測定する時に非常に細やかな神経を使わないといけませんので、専門家にお願いしたほうが変化率は出ると思います。


前田先生
 われわれ整形外科医は骨折を診るのは専門ですが、まだ骨粗鬆症の薬物治療や骨代謝マーカーの扱い、内科的疾患、婦人科的側面などに関しては苦手ですから、もっと各科で連携して診療できないかと思っています。
 それともう1つはアレンドロネートのデータは非常に良いということをもう少し整形外科医にも一般の方にもアピールすれば、骨粗鬆症の治療が進み、骨折や寝たきりの予防にもつながるのではないかと思います。


桐山
 意外と知られていないのは、骨粗鬆症と同じく寝たきりの原因にもなる脳卒中、血管障害の高血圧治療による予防効果はせいぜい30〜40%ですが、ビスフォスフォネートによる骨折予防効果は50%あるということです。しかも医療経済学的にも非常に効率が良く、患者さんにあまり負担をかけないツールが出てきたのではないかと思います。
 ただ、やはり飲み方に注意を要しますから、時々の見方の確認をしないといけないと思います。
 本日はどうもありがとうございました。

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