「 ステロイド性骨粗鬆症の薬物療法 」
桐山
では、最後の症例について検討したいと思います。
|
症例4
76歳、女性。
膠原病の診断でプレドニゾロン7.5mg、
5年間服用中。
活性型ビタミンD3 0.5μg服用中。
10年前にL1の圧迫骨折。
5ヶ月前にTh7の圧迫骨折による痛み、
歩行障害(不安定)のため来院。
エルカトニンを追加、転倒予防体操実施。 |
前田先生
症例4の患者さんは、熱が出て全身が痛かったということで、膠原病の診断がついています。プレドニゾロン7.5mgを5年間服用、活性型ビタミンD3も0.5μgを服用していたようです。10年前のL1圧迫骨折の既往があります。5ヶ月前にTh7の圧迫骨折で痛みがきて、来院された時には歩行が不安定だということでした。0.5μgの活性型ビタミンD3が出ていましたので、今はエルカトニンを追加している状態です。
この方のSOSは1,492m/sで、骨量は約80%ですから、年齢からするとほぼ正常に近いです。このような方でも既に1箇所圧迫骨折があるので、アレンドロネートのよい適応であったかもしれません。骨量低下はあまりないけれども、今からでもまた新しい骨折が起こる可能性が高いわけです。
桐山
プレドニゾロン7.5mgというのはどうですか?
藤山先生
リウマチの先生が使う量としては、まず上限に近い量だと思います。大体日本では5mg程度までに抑えることが多いですが、コントロールが悪い場合は7.5mgくらいまでは使用します。7.5mg程度までであれば、ビスフォスフォネート製剤を使う良い症例になると思うのですが、ステロイドを5年間投与していることと、76歳という年齢から、一度骨代謝マーカーを検査して、骨代謝回転が正常以下ではないことを確認した方が安心だと思います。
桐山
やはりビスフォスフォネートを使ったほうが良いと思われますか?
藤山先生
現状ではビスフォスフォネートに代わる薬剤はないと思います。ステロイド性の場合は、アレンドロネートは3年間ぐらいのデータが出ていますが、米国リウマチ学会ではゴールドスタンダードとして、ステロイド使用者で骨量が低下し始めたらビスフォスフォネートを使います。ステロイド投与初期の急速な骨量減少に対しては、ビスフォスフォネートが非常に有効であることは大規模試験で確認されていました。そして最近では、アレンドロネート、リセドロネート、パミドロネート、エチドロネートの長期成績が出始めています。すべてプラセボ群に対しては有意に骨量減少を抑えますから、臨床的なデータとしては非常に有効となりますけれども、原発性骨粗鬆症の治療成績に比べると、やはり総じて増加率は低いですね。
桐山
骨折予防に関してはデータが出ていますか?
藤山先生
症例が少なく、はっきりした報告はありません。
プラセボ群、あるいはプラセボというよりは実薬なのですが、大体活性型ビタミンD3、Ca剤の対照試験でそれを上回って抑制していますので、薬剤としては有用なのですけれども、やはり原発性と比べて有効性が若干劣るところは今後興味があるところですね。
前田先生
ステロイド投与例でのビスフォスフォネート治療はどの段階で開始するのがよいのでしょうか?
藤山先生
横断的に検討するとステロイドを飲んでいるだけで骨折の有病率は4倍から7倍といわれています。ですから、米国リウマチ学会の基準では、骨量が正常以下であれば使って構わないとされています。
前田先生
骨量がYAMの80%以下だったら使ったほうがよいということですね。骨量が急激に下がるポイントを抑えるのが一番治療としては良いのでしょうね。
藤山先生
ステロイド骨粗鬆症は骨折の危険が非常に高いということ、それからステロイドを飲み続けても骨量はいつまでも急激に減っていくわけではないことがわかったことも大きいと思います。半年〜1年の間に一気に落ちて、あとはステロイドの投与が継続していても骨量は横ばいで推移します。ですから、やはり疾患、治療のターゲットとしては最初に集中的にやるようになっていると思います。
日本の場合はステロイド性骨粗鬆症に関しては活性型ビタミンD3を使っている場合が多いと思います。米国では活性型ビタミンD3に対しては非常に消極的だったので、米国リウマチ学会の基準で活性型ビタミンD3も治療薬剤の基本薬として挙げられていることは非常に画期的だと思います。たとえ骨量が正常であっても私は活性型ビタミンD3は処方します。そしてできるだけ早期に骨量を測って、落ちているのがはっきりしている方については、早めにビスフォスフォネート製剤を使い対処したほうがよいと思います。
桐山
藤山先生は半年〜1年にターゲットを絞ると言われましたけれども、ビスフォスフォネート治療はいつまで続ければよいのでしょうか?
藤山先生
パミドロネートでの報告では、1年程度で中止してもステロイド投与初期のように減ることはありません。投与中止後にまた骨量を測定して再開するかを判断することになります。
|