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オステオアゴラ九州沖縄エリア 2002年秋季 座談会
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テーマ : 症例から考える骨粗鬆症の診療
桐山
 併用に関するエビデンスはなかなか出てこないのですが、HRTと活性型ビタミンD3を組み合わせたらHRT単独よりも良い。それからアレンドロネートに活性型ビタミンD3加えたら良いというデータは少しずつ出てきています。


前田先生
 飲み薬を2種類組み合わせるのもなかなか難しいので、圧迫骨折も骨粗鬆症もある患者さんにはアレンドロネートとエルカトニンを併用しています。どちらも骨吸収抑制薬ですが、圧迫骨折は痛みを伴いますので、除痛効果もあるエルカトニンとアレンドロネートを併用しています。


桐山
 薬物療法としては、婦人科ではHRTが第一選択だと思いますが、HRTを勧める時、なかなか受け入れが悪い理由、また逆に受け入れられる理由はいかがでしょう?


村上先生
 婦人科でもHRTのコンプライアンスが非常に悪いのは出血のためですね。私たちは50歳くらいの閉経前後の方にHRTを使うことがありますが、50歳くらいの方なら最初は周期投与法、逐次投与法がよいでしょう。しかし連続投与法にしても、半年〜1年くらいは破綻性の出血があることをよく説明することが大事です。コンプライアンスはおそらく20〜30%程度だろうと思います。
 それからやはり癌の問題があります。1997年に ”Lancet” で「HRTを5年以上使えば乳癌の相対危険度が1.35倍になる」と報告されています。子宮内膜癌は黄体ホルモンを併用すれば減少しますから問題はありませんが、乳癌の問題は確かに出てきます。しかし、乳房検診を定期的に行えば、死亡率に関しては少なくなり、相対危険率で言えば0.7くらいとの報告もあります。
 一方でHRTは血管運動神経症状(ほてり、発汗など)にはよく効きますから、その改善を実感されて続けているという方もいます。また、この薬を飲むまではあまりやる気がなかったのだけれども、薬を飲んだらだいぶ日常生活にも張りが出て、やる気が出てくるからという方は案外続けられます。しかし、ビスフォスフォネートに比べたらコンプライアンスはかなり悪いですね。


桐山
 藤山先生、アレンドロネート、リセドロネートが出てきたことと、HRTや他の薬剤との関連に関してはいかがですか?

藤山先生
 選択の幅が広がった点ではすごく良いと思うのですけれども、使い分けの指針については、現状は何もないに等しいですね。というのは、結局骨代謝マーカーで見ていても、低骨代謝回転の方というのは外来ではまず皆無なので、結局、骨量が少ないほうにビスフォスフォネート製剤を使い出して悪いという方はまずいないと思うのです。


桐山
 以前、閉経後骨粗鬆症と老人性骨粗鬆症について、閉経後は代謝回転が高く、高齢者では代謝回転が低いといわれていましたが、調べてみると、ほとんどが高いか正常くらいです。ですから、代謝回転が低くて骨量が低い方は高齢者ではほとんどいないですね。


藤山先生
 使い分けというのは、併用療法も含めて今後の課題だと思います。HRTはノンレスポンダーがいますが、それは骨代謝マーカーである程度推測できるという報告もされています。
 HRTでは、患者さんがどのような生活を送りたいのかといった情報も重要だと思います。日本人は「ホルモン」という名前がついただけで、何か危ないという、いわゆるアレルギー反応を起こしてしまう面で結構断念する方もいますから、HRTの骨以外の治療効果も含めて患者さんに明示したうえで、どちらを選択するかと聞くのが今は現実的なのではないかと思います。


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