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オステオアゴラ九州沖縄エリア 2002年秋季 座談会
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テーマ : 症例から考える骨粗鬆症の診療

 症例3
 76歳、女性。
 L1、L2、L3、の魚椎変形あり。
 Th10の圧迫骨折。
 活性型ビタミンD3、エルカトニン投与、
 コルセット装用。
 骨量(MD法):YAMの67.2%
 4ヵ月後、Th9の圧迫骨折。
 ビスフォスフォネート投与開始。
 

前田先生
 次の
症例3には逆流性食道炎、頻脈、呼吸機能不全、かなりの亀背があります。当院にはTh10の圧迫骨折で来られました。通院で治したいという希望から、活性型ビタミンD3とエルカトニンの投与とコルセットの固定で治療しました。
 中手骨で骨量を測りましたがYAMの70%未満でした。4ヵ月後にかなり強い痛みが来ましたので、レントゲンを撮ってみると、Th9も新たに骨折していました。これもかなりの扁平椎ですから、胸部、背部に痛みがあったのですが、「一度入院したら入院したままになるから、通院させてください」というので、通院治療を続けています。
 ビスフォスフォネートでうまく治療をしておけば第2の骨折は防げたのだろうか、と考えさせられる症例です。


桐山
 圧迫骨折が起きた時、硬性コルセットをしっかり巻いて潰れないように寝せて、それからコルセットを使いながら徐々に起こしていくのが整形外科の基本だと思いますけれども、私の印象としてはそれでも潰れるものは潰れてしまいますから、できるだけ早めに起こすのが良いのではないかと思います。

前田先生
 私もそう思います。ただ、年齢や活動性などにもよるとは思いますが。


桐山
 コルセットを巻くと腹圧が補えて痛みが取れることが多いため、骨折のためではなくても痛みがある場合にコルセットを使用する事があります。そうすると腹筋、背筋をより弱める結果になりますので、長期使用すると良くないのではないでしょうか。ですから、外すタイミングがすごく大事になると思いますが、整形外科ではどのように対処されていますか?

前田先生
 筋力だけに限定して考えた場合は、コルセットを使用しても3ヶ月は筋力が下がらなかったというデータがありますが、できるだけ早く外すのがもちろん基本原則です。

村上先生
 円背の患者さんで逆流性食道炎、過敏性大腸炎などはどのくらいの比率であるのでしょうか。

桐山
 心拍数で出ているデータでは、controlに比べて、前弯のひどい方では心拍数が明らかに多いということです。頻度で出ているデータでは、亀背や側湾を合併した方では食道裂孔ヘルニアが40%以上の場合もあります。亀背の方では逆流性食道炎が圧倒的に多く、50%を超える場合もあるようです。

藤山先生
 桐山先生のお話では、内科領域で見る骨粗鬆症で一番手ごわいものは不動性のものということですね。不動性は現状の薬剤では、その骨量減少を止めることは無理だと思うのです。ですから、例えばどれくらいの期間、あるいは骨量的にどれくらいまでだと臥床で待ってよいかという基準については、どのように考えたらよいでしょうか。


前田先生
 どちらかというと、私は「70歳以上の方はできるだけ早めに起こしたほうがよい」という考え方です。ある程度形を元に戻したいから、やはり寝せておくという考え方もありますが、臥床させておいたほうがよいかどうかはまだ結論が出ていません。


桐山
 50歳の白人女性はなくなるまでに17%くらいが大腿骨頸部骨折を起こすといわれています。脊髄圧迫骨折が10%くらいです。手首の骨折がやはり多く17%くらいで、部位に関係なく骨折を起こす確立は50%くらいあるといわれています。日本人の特徴としては、いずれかの骨折を起こす確立はやはり40〜50%とほとんど同じなのですが、脊髄圧迫骨折が37%、大腿骨頸部骨折が5.5%と、大腿骨頸部骨折が少なくて脊髄圧迫骨折が多いことが挙げられます。したがって、日本では特に脊髄圧迫骨折を見ていく必要があると思います。

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