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オステオアゴラ九州沖縄エリア 2002年秋季 座談会
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テーマ : 症例から考える骨粗鬆症の診療
桐山
 では前田先生、次の症例をご紹介いただけますか?

 症例2
 86歳、男性。
 肋骨骨折の既往あり。
 心臓ペースメーカー装用。
 ベッドからずり落ちて受傷。
 L2の圧迫骨折があり、痛みが強く入院。
 ベッド上安静が長く、リハビリを行うも
 体力が低下し、半年後に脳梗塞にて死亡。

前田先生
 
症例2はレントゲン正面写真のみでの紹介になりますが、肋骨骨折の既往歴があり、また心臓ペースメーカーを入れているということでした。ベッドからずり落ちて受傷したそうですが、L2に圧迫骨折がありました。
 これは正面像ですが圧迫骨折が全くわかりません。腰痛を訴えて来られましたが、結局、痛みが強くなり、家族の方が面倒を見ることができないため、別の病院に入院しました。
 後から聞いた話では、まずベッド上安静が3〜4週間あったそうです。年齢も年齢だったので、リハビリもしたけれども、歩行困難になってしまい、そして半年後には脳梗塞で亡くなられたそうです。こういう例が結構あると思います。


桐山
 脊髄圧迫骨折に限局すると、今アレンドロネートの研究が10年間進んでいるのですが、その中でプラセボグループを見ると、圧迫骨折を来したぶんは明らかに死亡率が高いのですが、その分析はまだできていません。
 原因ははっきりとはわからないのですが、おそらく全身状態が悪化していくために死亡率が高いと考えられます。


前田先生
 大腿骨頸部骨折だと5年後の累積死亡率が37.9%、それに対して圧迫骨折では5年後の累積死亡率が28.9%というデータもあるようです。今年の日本整形外科学会の教育講演から抜粋しますと、「骨粗鬆症性椎体骨折で入院した患者の平均56ヶ月の追跡調査結果では、約1/3が既に死亡していた。種々の検討結果から、受傷後の歩行能力の低下と骨折椎体数の増加が骨粗鬆症性脊髄骨折患者の予後を悪化させる因子であるとの結果を得ている。受賞後の臥床の短縮と多発する骨折の発生の予防が重要である。」とあります。1/3が死亡していたということは、やはり圧迫骨折による不動によって全身の機能が低下するわけですね。そのような意味で、脊髄圧迫骨折の予防と治療は非常に重要だと思います。


桐山
 大腿骨頸部骨折を起こしたらほとんどの場合は入院しますね。ですから、発生率、死亡率などはモニタリングしやすいのですけれども、脊髄圧迫骨折の場合は、臨床的に入院を要するものは一部ですので、そういう方は非常に重症なのかもしれません。通常、私たちがレントゲンで発見できる脊髄圧迫骨折はそれほど死亡率が高いわけではないと思います。
 婦人科的には脊髄圧迫骨折について、特にQOLに関してはいかがですか?


村上先生
 私どもの施設に骨量検診などで来院される患者さんは50〜70歳代の元気な方が多いですから、ここまでのデータはありません。最近婦人科では子宮溜膿腫や子宮脱の高齢の患者さんが多いようです。そういう患者さんはやはりかなり骨量が下がっていて、転倒骨折などがトリガーとなり亡くなるケースがあると思います。


桐山
 
症例2の男性の場合は、この骨を見る限り著明な骨量低下があるとは考えにくいですけれども、圧迫骨折を起こすリスクのうち、骨量が70%〜80%占めていると思いますが、残りの20〜30%は骨量以外の筋力やバランスによって規定されているので、例えばベッドから滑って落ちた時に力が直接骨にかかってしまう状況で、筋力不足の状況であれば、骨折を起こしてもおかしくないわけです。この方の場合は長期臥床したのが非常に悪い気がします。
 圧迫骨折というのは、内科で見ていると呼吸機能が非常に悪くなる。そういう方は大体亀背で、前弯が非常に強い方が多く、頻脈になったり息があがりやすくなります。それから消化器症状も非常に多いです。また、それが原因か結果かは難しいのですが、腹筋が非常に弱い方が多いため、大腸の動きが悪く、便秘、過敏性大腸炎になった方も多いです。

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